ジュンコさんのサンドイッチ


サンパウロ州バウル市での仕事を終え、高速バスで家のあるタトゥイへ帰る際に起こった出来事である。
車なら2時間で着く距離だが、バスは途中でいくつかの街に立ち寄るため、4時間の長旅だ。バスは1日に1本だけ、マリリアという日系人が多いといわれる街を出て、バウルやボトゥカトゥ、タトゥイなどを通り、ソロカバまで走る。

17時。
バウルからバスに乗り込むと、私の指定席の隣に日系っぽい顔立ちの女性が座っていた。連日早起きだったため(典型的ミュージシャンで早起きが大の苦手)、席に座った瞬間に爆睡する。

サービスエリアで起きて、トイレから戻ると隣の女性がサンドイッチを食べている。
「Você não quer comer um?(おひとついかが)」
とサンドイッチを見ず知らずの私に差し出す女性。
これ、ブラジルではよくあること光景である。
実は死ぬほどお腹がすいていたが、見ず知らずの女性からサンドイッチを貰うのはなんとなく気が引けてしまい、御礼をして断った。
バスが走り出してしばらく経ってから、「どこまで行くんですか?」と、女性が話しかけてきた(もちろんポルトガル語で)。私は女性に同じ質問をしてみた。
「ソロカバにいる娘夫婦と孫に会いに行くの。孫が"ばぁちゃん"に会いたいっていうから…。(微笑み)」

"ばあちゃん"!?
女性が"ばあちゃん"と言ったのを、私は聞き逃さなかった。
そこから、女性が日系2生だとわかると、息子さんが日本で働いていたことや、その際に日本へ旅行したことなどを話しはじめた。女性の名前はジュンコさん。
ジュンコさんは旅の道中であった出会いについて話してくれた。

飛行機が苦手なジュンコさん、ブラジルから乗り継ぎ先のフランスまでのフライトで睡眠剤を服用する。フランスから日本行きのフライトで意識が朦朧し、ドリンクサービスの受け答えがうまくできなかった。
その際、隣に座っていた女性がジュンコさんを手助けしてくれたそうだ。実は彼女はブラジル生まれのフランス人で、日本に到着するまで話が盛り上がり、苦手な飛行機の旅もあっという間だったそう。

日本滞在中、名古屋から東京まで新幹線に乗ったジュンコさん夫妻と息子さんは、途中の静岡から乗車した高齢の女性3人組が席をさがしているのをみかける。
ジュンコさんはカタコトの日本語で3人を呼び、席を譲ったそうだ。(サンパウロのメトロや市内バスでも、高齢者へ席を譲るのは当たり前で優先席はもちろん、それ以外でも必要な方に席を譲ることが多い)席を譲られた3人は「最近は席を譲ってくれる人は少ないのよ。」と、驚きながら、ジュンコさんらに感謝し、そのまま東京まで世間話が続いたそうだ。

その後も、ジュンコさんが日本滞在した際の話や、私がブラジルで何をしているのか…など話は盛り上がり、いつの間にかバスはタトゥイに入る標札から高速を降り、私の住む小さな田舎町が見えてきた。
バスがターミナルに停まる前に、ジュンコさんはバッグに入っていたもう一つのサンドイッチを「夕飯に」と私に持たせてくれた。(上記写真)
何日も家を空けていて食料もなく、最寄のスーパーも閉店時間をすぎていたので、ありがたく頂戴する。
飛行機で隣になった女性や、新幹線の話に加えて、私との出会いの話も、次に出会った誰かにしてくれるといいなぁなんて。

ちなみに、ジュンコさんに限らず、ブラジルには気軽に話しかけてくる人が多い。
目の前に時計があっても隣の人に「何時ですか?」と尋ねてくるような人。
先日も、スーパーで見知らぬおばちゃんが「みて!この綺麗なインゲン。R$2.99よ!あっちにあるわよ!」と教えてくれたり、公共料金の支払いをした際、おつりの硬貨がピカピカだったために「わぉ!こりゃいいことありそうね。」なんて業務以外のどうでもいいことを窓口の女性に言われたり、街ですれ違った人に「その服いいわね。どこで買ったの?」と聞かれたり…。
なんか人間味があっていい。


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