自主隔離5か月目のリマ北部にて。

自主隔離生活も5ヶ月目。
思い切ってパソコンを新調し、起きたらコーヒーとアボカドたっぷりの全粒粉パンを食べてから仕事に取り組むルーティンが出来上がった。ぺルーのコーヒーはあまり美味しくないが、アボカドはブラジルの何十倍も美味しくて安いので良しとしている。

今朝、ミルクポットを火にかけようとしたらガスが空になっていた。
リマではプロパンガスが主流であり、ガスがなくなったら電話をして配達してもらうか、自分で取りに行かなければならい。
更には自分で取替するのが普通であり、怖がりな私には辛い。ブラジルに住んでいた時もプロパンガスだったが、いつも同居人が助けてくれていたので、6年も南米に住んいて未だに一人でガスボンベの取替ができないのは少し恥ずかしくもなる。
ここでの同居人はいつも昼過ぎに起きるので、ガスの取替は諦めて目の前のコンビニエンスストアにドリップコーヒーを買いに行った。そこの店員さんは珍しいほど親切で、なんだかいい気分になった。

仕事をし始め、昼過ぎになっても同居人は起きてこなかった。
自主隔離になってから暫く開いていなかったレストランも、7月から政府既定のチェックをクリアしたお店は再開しはじめた。節約のため、レストランが再開しても自炊するようにしているが、仕方なく大通りの中華料理屋の弁当を買いに行くことにした。

ここ数日、リマは相変わらずの天気である。
相変わらずの天気というのは、冬になると通称Lima Grisと呼ばれる分厚い雲に覆われ、1日中15~18℃程度で非常に寒い。何より太陽が一切顔を出さないのだ。
これには正直参っている。私が住んでいたブラジルの田舎町は、年中絵の具の水色のようなすっきりした空をしていた。雨が降る日はバケツをひっくり返したように降り道が冠水する程だが、晴れの日は絵の具の空。まるで100か0の天気。
一方でリマは毎日50なのだ。代り映えがない。そして太陽がどれだけ大切なものだか、改めて実感したのだった。それが、外に出た時間帯に久々に太陽が顔を出した。数日ぶりである。気分も上がり、中華料理屋へ向かった。

コロナ渦してから、大通りには物乞いする人たちが2倍、いや3倍にも増えた。
リマでは、飴と引き換えにお金の支援をお願いする人が多い。
路上販売者も多いが、物を売る人は一定の値段を定めている。それに対してお金の支援をお願いする人は金額にこだわらず、殆どの場合が飴を持っているのでわかりやすい。
そして、小さい子供を連れている場合も多い。滞在先の建物から中華料理屋まで1km弱の道中、全員に支援をしたら弁当が買える程の値段になるかもしれない。

中華料理屋に着いて、いつも通りTi Pa Kayを頼もうとしたら、横に“Dulce”(甘い)と書かれていた。
Ti Pa Kayは鶏肉のから揚げに甘酢ソースがかかっているものなのだが、なぜ改めてDulceと書かれているのかわからなかった。店員さんに聞いてみるも、早口でよくわからない。
更にはマスクをしていると更に聞き取りにくい。終いには、店員さんが「奥にいる中国人を呼んでこようか?」と言い出した。なんと親切な…と思ったが、呼ばれたところで中国語で会話などできないので、書いてあるとおりDulceにしてくれと頼んだ。
ちなみに私はペルーで中国人と呼ばれることが殆どであり、今となっては間違えられたことろで全く嫌な気にはならない。そんなことより、店員さんの一言により料理人は中国人かもしれないという期待で空腹が更に増した。中国人の作る中華料理は本当に美味しいからである。

この店はテイクアウトのみの対応のため、注文は店の入り口でして、外で待つ。外には何台も車が止まっていて、出来立ての弁当を車内で食べている人が沢山いた。
中華弁当の良いところはワンタンスープがついてくるところである。更には量が多いので、昼の残りが夕飯となる。料理が嫌いな私には助かる。

スマホは充電のために事務所に置いてきたので、道行く人たちを見ていた。こうして、何もせずに歩く人をみるのが好きだ。
すると、20~30代ぐらいの女性二人が1~2歳ぐらいの女の子を連れて飴を売りながら歩いてきた。
彼女たちはベネズエラ人である。
私はなんとなくベネズエラ人がわかるようになってきたのだが、なぜ確信をもってベネズエラ人だと言えるかというと、女性の一人がベネズエラの国旗柄のマスクをしていたからだ。

飴を売る人たちは、あまり執拗にお願いをすることはない。
むしろ、わりとささっと通り過ぎてゆく。彼女たちもあっという間に私の目の前を過ぎていった。
その時、一人の男性が車から降りてこう叫んだ。

「Amiga! Quires una sopa para bebé?」

男性は、受け取った中華弁当を車内で食べようとしていたところだったが、女性と子供が通りかかたのを見て、セットのワンタンスープを連れている子供にと渡した。
それを見ていた店員さんは、すぐに持ち帰り用のスプーンを持ってきて女性に差し出した。

ほんの数秒の出来事だった。女性らはGraciasと礼を言い、スープをもって立ち去った。
私はそれを見て、なんとも言い表せない気持ちになった。目がうるんで、鼻が赤くなっていただろうが、マスクで誰にも見られずに済んだ。
私は自分が誰かを救えない悔しさでもなく、男性の優しさへの感動でもなく、何か違ったものに心を突き刺されたのだが、それが何なのかは結局わからなかった。

日本に住んでいたころ、こういったことが世界のどこかで起こっているという話は、ネットのニュースや友達から聞くことはあっても、無責任にもなんとなく遠い世界のような気がしていた。
しかし、いざ目の前で見るとただただ茫然としてしまうのだった。

しばらくして、Ti pa Kay Dulceを受け取り、元の道を戻った。
Dulceは想像以上に甘かったが、とても美味しかった。
肌に突き刺さるような隙間風に耐えながら、久しぶりにブログを書いている。友達の話によると、サンパウロは日中暑い程だとのこと。早く春にならないかなぁ。


(写真)今日の中華弁当。ワンタンスープ、揚げワンタンが入ったTi Pa Kay、ご飯はパラパラな炒飯、おそらく2人前はありそうです。


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