2016/10/29

【コード分析】イパネマの娘~前編~

Boa tarde!! こんにちは^^

ポピュラー和声理論、数年前まで本格的に勉強する時間が持てず、「やりたいことリスト」の中で止まったままになっていました。。
ただ、ブラジル音楽の複雑なコード進行がどうなっているのか知りたいと思ったのと、アドリブを吹くなら必然的に理解しないとならないので、2年前から本格的にポピュラー和声理論の勉強を始めることに。「始めました」と言うよりも、学校で必修科目なんですけどね。笑 
タトゥイの音楽院ではコードの基礎から分析、リハモナイズ(別のコードに書き換える)をブラジル音楽を主体に2年間で学ぶのですが、これは学んで良かったです。
日本でポピュラー和声理論はⅡm-Ⅴまでしか勉強していないので、完全にタトゥイ流ですが、せっかくなので少しずつ紹介したいと思います。




今日は世界で2番目にカバーされているボサノヴァの有名曲、イパネマの娘のコード分析をしていきましょう!
まずはメロディとコードを観察します。
曲はFメジャーで、最初のコードは主和音であるFmaj7、メロディは9thから始まります。
アナリーゼの方法ですが、基本的に調性内に収まっている曲はどこにカデンツ(Ⅱm-Ⅴ)があるのかを考えると早いです。先生は曲の最後から始めに向かってアナリーゼするようにすすめています。(←これについては後日説明します)

最初のAメロを分析するとこのようになります。
※後から気づいたのですが、maj7をブラジル流にF7Mと書いてしまいました。次回から日本での記譜法で書きますので今日はお許しを。。
コードの上に書かれている赤文字が最終的なアナリーゼです。

1小節目:Fmaj7、この曲の主和音なのでⅠmaj7
3小節目:このG7はⅤ/Ⅴと言って、FメジャーのⅤ度にあたるCに対するドミナントです。(セカンダリードミナント)ここまでは「A列車で行こう」と同じ進行です。
5,6小節目:主和音Fに対するⅡm7-Ⅴですが、ⅤはsubⅤに置き換えられています。subⅤに関しては後で説明します。
7小節目:ここでは8小節目のDbmaj7に対するⅡm-Ⅴですが、5,6小節目と同じ動きに合わせてⅡmをsubⅡmに置き換えています。
8小節目:このDbmaj7はFメジャーのダイアトニックコードには存在しないので、一瞬「何者??」と迷いますが、これはFメジャーのⅣmaj7(Bbmaj7)の置き換えです。本来、メジャーのⅣ度はmaj7ですが、これをⅣmに代えるのはAcorde de empréstimo modal (通称AEM)という同主調マイナーからⅣmを拝借して使う方法で、ブラジル音楽ではよく使われます。今回はその拝借されたⅣmの代用であるbⅥmaj7を使っています。その次のGb7は最初のFmaj7に戻るためのsubⅤです。
※Ⅳmの代用については後日ゆっくり書きたいと思います。

subⅤとsubⅡとは?

まずsubとはsubstituteのことで意味は代用です。日本語では裏コードと呼ばれているようです。
subⅤはⅤと同じトライトーンを含むコードのこと。
トライトーンとはドミナント最大特徴であり、2つの音の音程が増4度で出来ており、この響きは不安定でトニックに解決したがる動きを見せます。なので、ドミナントで重要とされるトライトーンを含む和音を組んで代用することができるというわけです!例ではG7のトライトーンは3度のシ、7度のファであり、そのシ、ファを含む和音はDb7(ファ、ドb)です。
本来はトライトーンの上下を交換して和音を組むのですが、アナリーゼする時は時短のために解決するコードの半音上のドミナントはsubⅤと暗記してしまっています。

subⅡはドミナントがあって存在するもので、subⅤに対してドミナント進行(Ⅱm-Ⅴ)します。ホベルト・メネスカルのバルキーニョ(リトルボート)はこのsubⅡm-subⅤが使われています。更にはsubⅡを置き、subⅤは元のⅤに戻し、subⅡ-Ⅴというパターンもあります。上記のイパネマはその例です。

実は簡単な進行だった??

一見複雑に見えるボサノヴァのコード進行ですが、ここまで説明したとおり、リハーモナイズされた代理コードによって複雑化されているのです。
じつはこれを簡単にすると
Fmaj7 /  〃  / G7 / 〃   / Gm C7 / Fmaj7 / Gm C7 
と、これだけなんです! 
ただ、このままだとちょっと在り来たりな感じに…。そこで、リハーモナイズをしたり、テンション(11,#11,13など)を重ねてハーモニーが豊かになるように工夫されているわけです。ブラジルにはこのリハーモナイズの天才が沢山いて、最近来日したトニーニョ・オルタやドリ・カイミあたりはブラジル音楽を学ぶ大学院生の研究課題にもされている程。実はショーロもリハーモナイズだらけです。

いかがでしたか?
和声の先生が「ブラジル音楽の説明ならブラジル人のアナリーゼに限る!日本にこの理論を紹介して~」と言ってくれたのですが、はたして需要があるのだろうか…。しばらく更新を続けていきたいと思います^^

※内容はポピュラー音楽理論の基礎知識(音程やコードなど)と和声の基礎知識を含めています。わからない事があったら気軽にご質問ください